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渡辺志保 ケンドリック・ラマーのピューリッツァー賞受賞を語る

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渡辺志保さんがTBSラジオ『アフター6ジャンクション』に出演。ケンドリック・ラマーがピューリッツァー賞を受賞した件やカニエ・ウェストのトランプ支持表明、ビヨンセのコーチェラのパフォーマンスとジャネル・モネイの新曲『PYNK』について話していました。



(宇多丸)本日は……ああ、そうか。すいませんね。このくだりね。本人が忘れている上に失礼という、非常に不評なコーナータイトルなんですが。まだ改革前なので一応名残として言わせていただきます。渡辺さん、本日はなんでいらしていただいたんでしょうか?

(宇垣美里)ちょっと丁寧(笑)。

(渡辺志保)フフフ、今日はケンドリック・ラマーのピューリッツァー賞受賞について解説しにまいりました。

(宇多丸)はい。ということでピューリッツァー賞。

(宇垣美里)そもそもどういった賞なんでしょうか?

(渡辺志保)ピューリッツァー賞というのはこれ、ウィキペディアからそのまま抜粋しているんですけども。新聞などの印刷報道、文学、作曲に与えられるアメリカで最も権威のある賞である。2010年からはインターネット上でのニュースサイトも対象となり、プロパブリカやハフポストなどが受賞している。審査基準はとにかく「卓越したもの」ということで。

(宇多丸)まあ、そりゃそうでしょうねっていう(笑)。

(渡辺志保)なのでまあ、すぐれた報道。で、ジャーナリズムにおける賞ということで。

(宇多丸)そういうイメージがすごく強くて。

(渡辺志保)そうなんですよ。で、ちなみに今年、2018年はいろんな部門があるんですけども、主な部門の受賞作については「#Metoo」ムーブメントの発端となった映画界のセクハラ事件を扱ったニューヨーク・タイムズ紙であるとか、同じく雑誌ニューヨーカーなどなど。あと、ロシア疑惑を報じたニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストなどが受賞したというところなんですけども。このピューリッツァー賞なんですけども、あまり普段はフォーカスをされることはなさそうな感じもするんですが、音楽部門というのがあるんですね。

(宇多丸)僕、はじめてピューリッツァー賞に音楽部門があるのを知りました。

(渡辺志保)なので、そこにジャーナリズムとか何を求めるのかな?っていう感じもちょっとするんですけども。で、なんと今年2018年のピューリッツァー賞の音楽部門はアメリカ・ロサンゼルス出身のラッパーであるケンドリック・ラマーの2017年に発売されたアルバム『DAMN.』が受賞したという。

ダム
Posted at 2018.5.2
ケンドリック・ラマー
ユニバーサル ミュージック

(宇多丸)うん。

(渡辺志保)なので、とあるヒップホップのアルバム作品がピューリッツァー賞を受賞した。これは長いピューリッツァー賞の歴史の中でもはじめてらしいんですね。音楽部門は毎回クラシックとかオペラとか、あとたまにジャズミュージックとか。いわゆるそういった分野の音楽家の方が受賞していて、こういったポップスであるとか、ましてやラップ・ヒップホップの作品がこの賞を受賞することは史上初であると。

(宇多丸)結構すっ飛ばしていきなりラップっていう感じだよね。

(渡辺志保)そうなんですよ。で、ちなみに関係があるかどうかわからないですけども、ピューリッツァー賞の選考委員会というのがありまして。その中に、2006年からダニエル・アレンさんという黒人女性の方が参加しているそうなんですね。で、2015年の委員会ではそのダニエル・アレンさんがはじめてアフリカ系アメリカ人の女性としてピューリッツァー賞の議長に選ばれたということもありますので。もしかしたら世論プラスそのピューリッツァー賞自体の選考委員会の中でもいろいろと革新的な出来事があって、今回の受賞に至ったのではないかとも思っています。

(宇多丸)世の中の全体の流れとしても、それこそボブ・ディランがノーベル文学賞を受賞したりとか。あとプラス、そういうマイノリティーカルチャーとかに対する見直しとか。全体の流れが味方した結果という感じもあるのかな?

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(渡辺志保)もう追い風が吹いたというような感じがします。

(宇多丸)それにしてもすごいね。

歴史的な出来事

(渡辺志保)すごい。なので、ラップであるとか黒人文化というものが社会的なメッセージを持って、それが有機的にちゃんと結果を残している。人々の心を動かすもの。そしてジャーナリズムという観点からも評価されているということなので。本当に歴史的な出来事なんじゃないかなと思っています。

(宇多丸)僕としても「ここまで来たか」感がすごくありますよ。ケンドリック・ラマー、しかも『DAMN.』なんだね。その前の『To Pimp A Butterfly』もさ、当然名盤中の名盤というのがあったんだけども。

トゥ・ピンプ・ア・バタフライ
Posted at 2018.5.2
ケンドリック・ラマー, ジェイムズ・フォンテレロイ, ラプソディー, ジョージ・クリントン, ビラル, ロナルド・アイズレー
ユニバーサル ミュージック

(渡辺志保)そうなんです。それもジョージ・クリントンとかいろんなジャズのミュージシャンなんかもワーッといてね。

(宇多丸)あれこそ、黒人音楽の歴史を全て詰め込んだ……。

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(渡辺志保)そうそう。音楽的にはっていう。ただ、ナラティブ性というか……これは私の個人的な感想なんですけど、『DAMN.』の方がよりリアルな生々しい描写というのが多い。で、その2017年の「今」を詰め込んだ作品。この後に曲もちょっと聞いていただきたいと思うんですけど、結構如実にトランプ政権を批判していたりとか。「もうオバマ大統領は戻ってこないんだよ」っていうようなことをラップしていたりというところもありますので。ジャーナリズムという観点ではその点が評価された結果なのかな?っていう風にも……。

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(宇多丸)うんうん。やっぱりさ、トランプの時代であるっていうことがめちゃめちゃ大きいよね。各ジャンルの表現において。

(渡辺志保)特に映画とかもそうだと思うんですけど。そういう感じですかね。

(宇多丸)なるほどね。じゃあちょっと1曲、どんな曲なのか?っていうお話をいただいてから聞きたいんですが。

(渡辺志保)『DAMN.』にはいろんなタイプの曲が入ってるんですけども、今日聞いていただきたいのは『XXX.』。これはロックバンドのU2が参加している曲で、ボノがコーラスを歌っていて、他のメンバーもちゃんと曲のクレジットに参加している。ちなみに今年行われたグラミー賞ではこのボノとジ・エッジ。U2のメンバー2人がケンドリック・ラマーと一緒にステージに立って曲をパフォーマンスしたっていうこともありまして。


(宇多丸)はい。

(渡辺志保)で、この曲が私としては『DAMN.』のアルバム収録曲の中ではさっき言ったような直接トランプの名前を出して批判をしていたりとか、結構過激な描写というか。たとえば「偉大なるアメリカ国旗は爆発物に包まれて引きずられたんだ」とかそういった描写があったり。まあ、過激といえば過激なんですが、これがいちばん端的にいまのアメリカ情勢というものをケンドリックの言葉を通じて表されているかなと思う曲のひとつです。

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(宇多丸)なおかつね、そこにU2っていうか、ボノはさ、それこそよく西寺郷太くんが例に出す『Sun City』ムーブメントを引っ張っていたりするからさ。もう当時から音楽の潮流とメッセージと、特にヒップホップとの融合と実は相当かかわっていたりするんだよね。

(渡辺志保)そうなんですよね。なので社会問題を歌にしてメロディーにするということにおいては、本当にU2先輩っていうか。

(宇多丸)パイセン。ボノパイセンと。

(渡辺志保)ボノパイセンの色が出ているという感じがしますので。しかも曲も最初は結構激しいビートで始まって、ガラッと転調してそこにボノのコーラスがサーッと、ワーッと入ってくるんですけども。結構鳥肌モノっていう感じがしますので。ちょっとぜひここで聞いていただきたいと思います。

(宇垣美里)聞きたくなります。

(渡辺志保)ありがとうございます! では、ケンドリック・ラマー feat. U2で『XXX.』です。

Kendrick Lamar『XXX. Feat. U2』



(宇多丸)ちょっとまだ2番の途中みたいなところだけど。これ、ずっとストーリーというか、バースが中身展開しているんだというようなこともいま、志保ちゃんが曲中に解説してもらっていて。

(宇垣美里)教えていただいて。すいません。気になりすぎちゃって、聞いちゃった。

(渡辺志保)でも、このアルバムもケンドリック・ラマーの前のアルバムも全部日本で発売されている国内盤のCDには本当にLA在住の塚田桂子さんという素晴らしい対訳家の方によるすごく細かい歌詞の対訳が載っていますので。ぜひぜひお時間のある方はそういったものもご覧になりながら、どんなことを歌っているのかな?っていうのを。

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(宇多丸)歌っていることと、あとこの間Genaktionさんにも来てもらったんだけども。ぜひ元のライムを、ちゃんと韻を英語的表現でやっているから。そこの見事さを味わっていくとご飯を何杯でも……っていう。

(渡辺志保)いける、みたいなね。で、ちなみにケンドリック・ラマーは今年のフジロック・フェスティバルに出演が決まっておりまして。ヘッドライナーとして。かつ、今年のフジロックはこの方も2008年にピューリッツァー賞の特別賞を受賞しているんですが。ボブ・ディランも今年、フジロックに出るということで。結構、ケンドリックとボブ・ディランが同じフェスに出るっていうことは世界的にもレアな感じがします。

(宇多丸)うんうん。すごいね。

意識高い系と享楽系の二極化

(渡辺志保)楽しみです。まあ、そんな感じなんですけども。で、いろいろとちょっといまアメリカも、さっき曲が流れている途中に宇多丸さんもおっしゃっていましたが、二極化しているというか。めちゃくちゃ意識高い系のラップ……まあ、こういったケンドリック・ラマーとか。あとはロジックとか、J・コールっていうようなラッパーがいるんですけども。

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(宇多丸)うんうん。

(渡辺志保)そういっためっちゃ意識高い系のラッパーと、あとは「よっしゃ! やいのやいの!」みたいな。

(宇垣美里)やいのやいの!(笑)。

(宇多丸)本当に享楽的なというか。

(渡辺志保)「よいさよいさ!」みたいな(笑)。

(宇多丸)しかも曲もね、「よいさよいさ! よいしょー!」みたいなね。「酒! 飲む!」みたいなね(笑)。

(宇垣美里)テンション上がる系の(笑)。

(渡辺志保)「酒! 飲む! 女!」(笑)。

(宇多丸)「女! 好き!」って。本当にこういう歌詞なんだよ、冗談抜きで。

(渡辺志保)そうなんです。

(宇多丸)「車、ピューッ!」とか。本当にそういう歌なんだよ!



(渡辺志保)「Skrrt Skrrt!」っていうのがあるんですけども。まあ、結構二極化しているんですが。


(宇垣美里)うんうん。

(渡辺志保)なので、そこがまた面白いところなのかなとも思うんですけども。面白いといえばコイツもいる!っていう感じもしますが、あのカニエ・ウェストというアメリカ・シカゴ出身のラッパーがおりまして。最近は結構スポーツブランドと組んでスニーカーをめちゃめちゃ売っていたりとか、自分の服のブランドを始めたりでラップ以外もいろいろとお盛んなんですけども。

(宇多丸)うん。

カニエ・ウェストがトランプ支持表明

(渡辺志保)そのカニエ・ウェストが突然Twitter上で「いかに自分がドナルド・トランプのことが大好きか」っていうのをバーッとやりだして。本当に先週のことなんですけど。で、結構連投でめちゃめちゃ長いツイートを。


(宇多丸)ねえ。で、トランプが喜んじゃってね!

(宇垣美里)サインしていましたよね?


(渡辺志保)そうなんです。引用RTで「ありがとう、カニエ。クール!」みたいな感じで。「クールじゃねえよ!」みたいな感じがするんですけども。


(宇多丸)フフフ(笑)。

(渡辺志保)まあ、いま実際に聞いていただいたように、ケンドリック・ラマーであるとか他のアーティストたちが結構いま、アンチ・トランプと言いますか、いまの情勢、現状を嘆いている。それを一生懸命みんなが歌であったり、みんなで集まってデモ、マーチ(行進)をしてそういった現状をなんとか変えようと一丸となっている時にカニエが結構、お調子者っていうのは失礼な言い方ですけども。結構軽いツイートで「僕はトランプを愛しています」みたいなことを言うと、またちょっと水を差すっていうのは不適切な言い方だとは思うんですけども。

(宇垣美里)流れに逆行するような?

(渡辺志保)逆行していますし、かつ、それにどれだけ本人の意志があってそういう発言をしているのか? どれだけ理論付けてそういう発言をしているのかっていうのが全く見えないという。

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(宇多丸)カニエはさ、もともと結構とにかく炎上体質っていうか。

(渡辺志保)そうなんですよ。

(宇垣美里)ちょっと軽いんですか?

(宇多丸)だし、ちょっとおかしなことを言いがちな……特に最近は結構その気があってですね。奇人変人の気がちょっとあって。

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(渡辺志保)うんうん。そうなんです。建設的ではないみたいな感じがすごくしていまして。で、まあトランプは共和党ですよね。なので「共和党のことはこれから勉強します」みたいな。

(宇多丸)ああ、そういうノリだ。

(宇垣美里)まだ勉強もしていないのに「好き」と言っちゃったっていうことですか?

(渡辺志保)そうなんです。

(宇多丸)たぶん逆張りっていうか、「みんなそっちで盛り上がっているけど、俺は別にそんな、あいつのことが好きだよ」みたいな。そんぐらいの。

(渡辺志保)そうそう。なんかそんな感じがしちゃう。

(宇垣美里)わかって言っているのか?っていうことですよね。なるほど。

(渡辺志保)だからそれが別に個人の発言は自由。なんだけども、いかにそれがいい意味でも悪い意味でも影響力を持っているのか?っていうところに関して、もうちょっとどうにかこうにか自覚的でいてほしいなと。

(宇多丸)まあそんぐらいカニエはアーティストとしてはもう本当に何度もトレントを変化させてきた、もう偉大なアーティストだから。

(渡辺志保)でもそういうところを取っ払っちゃうと、もうカニエの良さっていうのはなくなってしまうから。だからすごいファンはね……。

(宇多丸)いや、キム・カーダシアン家のリアリティー番組の中ではカニエは超いいやつっていうね。

(渡辺志保)そうなんですよ(笑)。だからまあ、ファンとしてはすごく複雑な胸中であるという感じです。

(宇多丸)フフフ(笑)。まあでも「カニエがまた変なこと言っているよ」っていう、そんな感じもあるからね。

(渡辺志保)まあ、そうそう。彼は6月1日に自分の新しいアルバムを出すと。それも自分でアナウンスしていますので。それに向けた炎上商法なんじゃないか? という声もあるが、私としては炎上商法にしてはちょっと……。

(宇多丸)趣味がよろしくないぞと。

(渡辺志保)うん。という風に思いますね。

(宇垣美里)まだ炎上であってほしいぐらいですよね。意識的だったらまだいいですけど……。

(渡辺志保)そうなんですよ。うん。まあ、そういったこともあると。で、まあ先ほどのケンドリックの話があり、このカニエがどうたらこうたらっていう話もあるんですけど、いま言ったらクサい感じがしますが「音楽で世界を変える」みたいなことが実際にアメリカでは本当にそういう兆しがあるという風に言えるかなと思うんですね。たとえば4月の2週目、3週目にアメリカ西海岸の砂漠の中でコーチェラ・フェスティバルっていうすごく大きい音楽フェスティバルが行われたんですけども。

(宇多丸)はい。

コーチェラの話題をさらったビヨンセ

(渡辺志保)その中で結構話題をかっさらったのがビヨンセのパフォーマンスなんですね。で、ビヨンセって黒人女性の、日本でもたくさんファンがいると思うんですけども。ソロシンガー、ビヨンセがフェスティバルのトリを飾りまして。で、そこで表したのがエジプトの女王様の格好をしたりとか。あと、彼女はアメリカのニューオリンズっていうところに自分の母親のルーツがあるんですけど、そのニューオリンズの音楽文化をブラスバンドで体現したりとか。ありとあらゆる黒人文化の……

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(宇多丸)フラタニティとかね。

(渡辺志保)そうです! フラタニティネタ、私すっごい好きで。

(宇多丸)こう、ステップを。大学の友愛会で決まったステップでバンバンバン!っていうのがあって。それを取り入れたりとかね。

(渡辺志保)そうなんですよ。で、そういう本当に細かい細かいディテール。あと、彼女がメンバーであったデスティニーズ・チャイルドの再結成があったり、自分の妹で歌手のソランジュを呼び込んで一緒に踊ったり。そういったニュースがたくさんありまして。なので、いわゆるポップミュージックではないブラックミュージックであるとか、メインではないマイノリティーの音楽とかカルチャーというのがいま、すごくアメリカで支持されているし、そういう世界を変えるようなパワーを持った音楽として認知されているというのがひとつ、現状としてあるかなと思っているんです。

渡辺志保 コーチェラ2018 ビヨンセのパフォーマンスを語る
渡辺志保さんがblock.fm『INSIDE OUT』の中でコーチェラ・フェスティバル2018のビヨンセのパフォーマンスを振り返り。その圧巻のパフォーマンスについて解説していました...

(宇多丸)だからすごくね、ヒップホップとかR&Bがポップカルチャーとしてメインストリームになったけど、それでソフトになるというよりはむしろ表現としては……。

(渡辺志保)もっとルーツに根深く根深く濃いところに……。

(宇多丸)ちゃんと濃い表現になっているというね。

(渡辺志保)で、今回のコーチェラのパフォーマンスも、最初にビヨンセのお母さんがいるんですけど、そのお母さんが「これ、ちょっとディープすぎじゃない?」みたいなことをビヨンセに言ったらしいんですけども。でも、「いま私がそんなライトなパフォーマンスしたって意味がないから、もっとディープなところを見せないと。そういったところをファン、リスナーに見せたい!」っていうことで、ああいうパフォーマンスになったっていう。

(宇多丸)ちゃんと(夫である)ジェイ・Zと仲良しなところを見せてね。

(渡辺志保)1曲夫婦デュエットをカマして。

(宇多丸)俺、でも『Deja Vu』のあれがいちばんビヨンセで好きなんだよね。

(渡辺志保)『Deja Vu』に行く前もちゃんとジェイ・Zの曲をブランスバンドでやって。そこからの『Deja Vu』っていう。



(宇多丸)仲いいじゃねえかよっていうね。

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(渡辺志保)ねえ。いいですね。夫婦円満という感じです。なので、ビヨンセに関してもずっとフェミニズムであるとかアフリカン・アメリカンとしてのルーツっていうようなことを歌っているんですけども。つい最近、この間の金曜日にジャネル・モネイというアメリカの女性シンガーがアルバムを出しまして。

ダーティー・コンピューター
Posted at 2018.5.2
ジャネール・モネイ
ワーナーミュージック・ジャパン

(宇多丸)『ドリーム』に出ていましたね。

(渡辺志保)『ドリーム』。そして『ムーンライト』にも出ていて。めっちゃいいボディをパーンと、腰にポケベル差して見せつけていたジャネル・モネイ。彼女はもともとソングライターとして活動をしていて、すごくひさびさにソロ・アルバムが出た。で、ちゃんとリリック(歌詞)の中でも「エミー賞をとって、トニー賞をとって、オスカーもとって……」みたいなことをちゃんと歌にしているような曲もあったりして、「うおおっ!」っていう感じがするんですが。


(宇多丸)やべえ!

(渡辺志保)彼女もまた新しい形でフェミニズムっていうか、女性を勇気づけるみたいな曲をこのアルバムの中ではもう何曲も提示しているんですね。で、今日もかけさせていただきたい曲がもう1曲あるんですが。そのジャネル・モネイの最新アルバム『Dirty Computer』に入っています『PYNK』っていう曲があるんですよ。これ、ミュージックビデオもぜひ見ていただきたいんですが、ジャネル・モネイがすごく変なズボンを穿いていて。そのズボン、パッとよく見ると「花びらの形かな?」って。で、よく見ると女性器の形のパンツ。で、そこから『クリード』にも出ていたテッサ・トンプソンっていう女優がお股から顔を出しているという、すごい女性の女性性を……。

(宇多丸)「ピンク」って……。

(渡辺志保)で、「あんたたち男の子がブルーだったら私たち女の子はピンク。ピンクを背負って生きてるんだよ。ピンクっていうのにはいろんな意味があってね……」って。で、ちなみにこの曲の元ネタ、メロディーの下敷きになっているのはエアロスミスの『Pink』っていう曲がありまして。それを元ネタにしているんですけども。



(宇多丸)おおーっ。

(渡辺志保)前にジェーン・スーさんもご自身とピンクについての関係性をエッセイで書いてらっしゃったことがあって。私もすごくそれが印象的だったんですけども。2018年のいま、ジャネル・モネイも同じようなテーマで1曲、曲を書いているというところです。

ジェーン・スー Jane Su ジェーンスー

(宇多丸)なるほど。

(渡辺志保)ここでみなさんに聞いていただきたいと思います。あ、いま裏でかかっているのがジャネル・モネイの『PYNK』。フィーチャリングでグライムスという個性的な女性シンガーを迎えていますけども。そういう曲になります。

Janelle Monae『PYNK』



(宇多丸)はい。ということで俺が余計なチャチャを入れているとどんどん時間がのびていくいということで。申し訳ございませんね。

(渡辺志保)とんでもないです。

(宇垣美里)すごくみなさん、「意識が高い」っていう言い方がいいかはわかりませんけども、なにか訴えなきゃ!っていう気持ちで歌っている方がすごく多いんですね。

(渡辺志保)そう。そうですね。それもまた、トランプ政権になったからこそ、そういうところにみなさん自覚的で。

(宇多丸)最近、浮上してきたっていう感じ。

(渡辺志保)っていうところかなと思います。

(宇垣美里)はい。渡辺志保さんにピューリッツァー賞を受賞したケンドリック・ラマーについて解説していただきました。それから最新のアメリカの音楽についても教えていただきました。

(宇多丸)またすぐにお願いします。全然語りきれてないと思うんで。

(渡辺志保)ありがとうございます。

(宇垣美里)またよろしくお願いします。

<書き起こしおわり>

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